コラム：「近代コーヒー焙煎機への発展 – 燃料・動力・温度センサーの革新 -」

近代コーヒー焙煎機の発展　― 燃料・動力・温度センサーの革新 ―

19世紀中期以降、工業用コーヒー焙煎機はアメリカではバーンズ社、ヨーロッパではプロバット社やゴットホット社を中心に急速な発展を遂げた。産業革命によってもたらされた新技術は、燃料、動力、温度管理といった各要素に取り込まれ、現在見られるような近代的焙煎機の姿を形づくっていった。

なお、焙煎の進行（色調や香り）を直接観察するためのサンプラー（トライヤー）は、この時期に先立つ1824年リチャード・エヴァンスの英国特許にすでに登場しており、その後の発展を支える重要な要素となった。

燃料

19世紀中頃までは木材や石炭が主に用いられていたが、やがてコークスやその燃焼で得られるコークスガスの利用が広まった。これにより火力は強まり、燃焼の安定性も向上した。

1792年、ウィリアム・マードックがコークスガスを照明に利用し、1812年にはロンドンで世界初のガス会社が設立された。1855年にはロベルト・ブンゼンが空気混合型のブンゼンバーナーを発明し、19世紀末にはその方式を応用したガス加熱機構が焙煎機にも導入され始めた。

動力

焙煎機の初期には手動クランク式が長く続いたが、1850年代以降は蒸気エンジンとベルトによる駆動が普及した。

1890年頃からは電動モーターが導入され、1889年にニコラ・テスラが交流誘導モーターの特許を取得すると、1920〜30年代にはこの技術が焙煎ドラムの回転機構に適用された。これにより従来の手動やベルト駆動に比べて駆動効率と安定性が飛躍的に向上した。

温度センサー

18世紀末から19世紀初頭にかけてパイロメーター（高温測定用温度計）が登場し、ウェッジウッドによるパイロメーターが知られている。

19世紀後期には焙煎機に排気温度測定用のパイロメーターが搭載され、1930年代以降は熱電対式パイロメーターが普及して焙煎品質の安定化に寄与した。

その後はドラム内部に直接センサーを設置し、豆温度を計測・記録し制御装置と連動させるシステムが一般化した。これにより焙煎は経験から科学的制御へと移行し、温度・時間・プロファイルに基づく焙煎レシピの標準化が確立された。

参考文献：

燃料

•   WIlliam H. Ukers "All about Coffee"  1922 New York
• Gas Light and Coke Company：https://en.wikipedia.org/wiki/Gas_Light_and_Coke_Company
• Bunsen burner： https://en.wikipedia.org/wiki/Bunsen_burner
• Tupholme, コーヒーガス焙煎機, US patent 558,123（1896）
• 動力
• Jabez Burns , Burns Coffee Roaster, US Patent 44704 (1864)
• History of Commercial Coffee Roaster：https://www.helenacoffee.vn/commercial-coffee-roaster-revolution-history-of-commercial-coffee-roaster/
•  WIlliam H. Ukers  "All about Coffee" 1922  New York
• Nikola Tesla : https://en.wikipedia.org/wiki/Nikola_Tesla
• 温度センサー
• Pyrometer： https://en.wikipedia.org/wiki/Pyrometer
• Wedgwood scale：
• Jabez Burns & Sons, Automatic Roaster & Cooler, US Patent2010582(1935)
• local-roaster-from-1920s-wood-fired：https://www.home-barista.com/roasting/local-roaster-from-1920s-wood-fired-t26536.html

コーヒー歴史年表に戻る