「アブダル・カディールの書」の版間の差分
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1587年に著述か。フランス国立図書館Bibliothèque national de Franceのほかに3種(マドリードのエスコリアル修道院El Escorial、ゴータ、アレクサンドリア)の写本が伝わっている。エスコリアルの写本は1558年の著とされ、著作の年代は確定していない。 | 1587年に著述か。フランス国立図書館Bibliothèque national de Franceのほかに3種(マドリードのエスコリアル修道院El Escorial、ゴータ、アレクサンドリア)の写本が伝わっている。エスコリアルの写本は1558年の著とされ、著作の年代は確定していない。 | ||
<br/> この書物は現存する最古のコーヒー書で、15〜16世紀のイスラム世界でのコーヒー関連の事象のほぼ唯一の情報源であり、歴史上最も重要なコーヒー書の一つである。現在までアラビア語からの全訳は存在しないが、18、19世紀に著名な二人の東洋学者の抄訳、部分訳があり、多くのコーヒー書に引用されている。 | |||
この書物は現存する最古のコーヒー書で、15〜16世紀のイスラム世界でのコーヒー関連の事象のほぼ唯一の情報源であり、歴史上最も重要なコーヒー書の一つである。現在までアラビア語からの全訳は存在しないが、18、19世紀に著名な二人の東洋学者の抄訳、部分訳があり、多くのコーヒー書に引用されている。 | |||
**アントワーヌ・ガランの抄訳:『コーヒーの起源と伝播』1699年刊 | **アントワーヌ・ガランの抄訳:『コーヒーの起源と伝播』1699年刊 | ||
**シルヴェストル・ド・サシの部分訳:『コーヒーの合法性の擁護』(1・2・7章の翻訳)。 | **シルヴェストル・ド・サシの部分訳:『コーヒーの合法性の擁護』(1・2・7章の翻訳)。 | ||
<br/> 『コーヒーの合法性の擁護』は『アラブ文選Crestomathie arabe』(1806年刊)に所収(p.412〜483)。 | |||
<br/> この2冊は、いずれも王立文書館(現フランス国立図書館)の写本をもとにした翻訳。 | |||
<br/> 訳のタイトルで明らかなように、イスラム社会でのコーヒー飲用の始まり(シェイク・ジェマレディンの逸話)、イスラム社会でのコーヒーとカフェへの迫害(主に宗教=イスラム、健康論争、カフェの社会への害)とそれに対する論駁が記されている。またコーヒーを讃美する詩も多数掲載されている。 | |||
<br/> ガランの抄訳ではファウスト・ナイロニが紹介した「山羊飼い伝説」への批判に多くのページを割いている。またド・サシの翻訳の注に「シェイク・オマルのコーヒー発見伝説」が掲載されている。 (山内秀文) | |||
'''参照文献''': | '''参照文献''': | ||
**Antoine Galland "De l'origine et du progrès du café" 1699 Paris | **Antoine Galland "De l'origine et du progrès du café" 1699 Paris | ||
**Sylvestre de Sacy "Crestmathie arabe"所収、第8章 "Les Preuves les plus fortes en faveur de la légitimité de l'usage du café" 1806 Paris. | **Sylvestre de Sacy "Crestmathie arabe"所収、第8章 "Les Preuves les plus fortes en faveur de la légitimité de l'usage du café" 1806 Paris. |
2024年8月8日 (木) 06:42時点における版
アブダル・カディールの書:
1587年に著述か。フランス国立図書館Bibliothèque national de Franceのほかに3種(マドリードのエスコリアル修道院El Escorial、ゴータ、アレクサンドリア)の写本が伝わっている。エスコリアルの写本は1558年の著とされ、著作の年代は確定していない。
この書物は現存する最古のコーヒー書で、15〜16世紀のイスラム世界でのコーヒー関連の事象のほぼ唯一の情報源であり、歴史上最も重要なコーヒー書の一つである。現在までアラビア語からの全訳は存在しないが、18、19世紀に著名な二人の東洋学者の抄訳、部分訳があり、多くのコーヒー書に引用されている。
- アントワーヌ・ガランの抄訳:『コーヒーの起源と伝播』1699年刊
- シルヴェストル・ド・サシの部分訳:『コーヒーの合法性の擁護』(1・2・7章の翻訳)。
『コーヒーの合法性の擁護』は『アラブ文選Crestomathie arabe』(1806年刊)に所収(p.412〜483)。
この2冊は、いずれも王立文書館(現フランス国立図書館)の写本をもとにした翻訳。
訳のタイトルで明らかなように、イスラム社会でのコーヒー飲用の始まり(シェイク・ジェマレディンの逸話)、イスラム社会でのコーヒーとカフェへの迫害(主に宗教=イスラム、健康論争、カフェの社会への害)とそれに対する論駁が記されている。またコーヒーを讃美する詩も多数掲載されている。
ガランの抄訳ではファウスト・ナイロニが紹介した「山羊飼い伝説」への批判に多くのページを割いている。またド・サシの翻訳の注に「シェイク・オマルのコーヒー発見伝説」が掲載されている。 (山内秀文)
参照文献:
- Antoine Galland "De l'origine et du progrès du café" 1699 Paris
- Sylvestre de Sacy "Crestmathie arabe"所収、第8章 "Les Preuves les plus fortes en faveur de la légitimité de l'usage du café" 1806 Paris.