ヴォルテール
ヴォルテールVoltaire
生没年1694年〜1778年。本名、フランソワ=マリー=アルエFrançois-Marie Arouet。18世紀フランスを代表する哲学者・文学者で、啓蒙主義の時代を象徴する人物。
哲学・小説・劇・詩などの多彩なジャンルでの創作を通して、理性の絶対的価値と精神の自由を唱え、時に封建的なフランスの政治権力や教会を厳しく批判したため、たびたび投獄され、パリ追放の措置を受けた。
ヴォルテールとカフェ、コーヒー
ヴォルテールの思想や行動に共感する知識人は多く、彼は啓蒙主義のスター的な存在となった。またプロイセンのフリードリッヒ大王、ロシアのエカテリーナ二世などの多くの啓蒙君主・貴族と交流し、理性に基づく寛容な統治を訴え、その実現をめざして行動している。
18世紀のパリのカフェは、知識人・上流階級の知的交流・活動の場となっていたが、その中心にいたのがヴォルテールである。彼は「カフェ・プロコープ」、「カフェ・ド・ラ・レジャンス」の常連で、ヴォルテールを中心に啓蒙思想への共感者たちの知的サークルがカフェでつくられた。その成果がディドロとダランベールが編纂した「啓蒙主義時代最大の知的事業」といわれる『百科全書』で、ヴォルテールも積極的に支援した。
ヴォルテールはカフェを舞台にした喜劇『カフェ、あるいはスコットランド女Café ou L'Écossaise』のほか、『カンデイードCandide』『哲学辞典Le Dictionaire philosophique』などの著作中で、カフェについて数多くの文章を残している。
カフェの常連だっただけでなく、ヴォルテールは大のコーヒーの愛好家で、日に数杯のコーヒー(チョコレートを混ぜた)を生涯欠かさなかったといわれ、体に悪いのでコーヒーを控えるようにとの友人の助言に対しての次のような逸話が残っている。
「私は50年以上コーヒーを飲み続けている。確かにコーヒーは毒かもしれないが、これまで私の体に悪い影響を及ぼすと感じたことはない」。
晩年を過ごしたスイスのジュネーヴでも1日数杯のコーヒーを欠かすことはなかった。 (山内秀文)
参照文献
・Wikipedia: Voltaire(フランス語)
・Felipe Ferré "L'Aventure du Café" 1988, Paris コーヒー歴史年表に戻る