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サンプラー(トライヤー)

提供:コーヒー歴史年表
2025年10月1日 (水) 20:11時点におけるTakahashi (トーク | 投稿記録)による版

(作成中)*コラム:サンプラー(トライヤー)

サンプラーは1824年、リチャード・エヴァンスが英国特許で記した “examiner” にその原型が見られる(図)。これは回転ドラムを止めずに豆を少量取り出して焙煎状態を確認できる装置であり、以後ヨーロッパやアメリカの工業用焙煎機に標準装備された。

1824年 Richard Evans による英国商業用コーヒー焙煎機の図。英国特許No. 4907より。
1824年 Richard Evans の商業用コーヒー焙煎機の図。 “examiner” が描かれている。Richard Evans英国特許No. 4907より。

サンプラー(トライヤー)は、片側に取手、先端に開口部を備えた棒状の器具で、ドラム側面や中空軸に差し込んで使用する。焙煎中の豆を取り出して色や香りを確かめ、必要に応じて再び戻すことができ、焙煎の「動的制御」を可能にした(写真)。

この発明によって、連続運転中の観察と焙煎度の精密な管理が可能となり、大規模商業焙煎の発展を支えた。その後20世紀に温度センサーや自動制御が普及しても、サンプラーは依然として色調や香りを直接確認するための基本的かつ不可欠な道具であり続けている。 

サンプラーの呼称について

国際的な呼称

  • 最も一般的:Sample Trier(Probat、DiedrichやBurns社 など)。
  • 他の表記:Sampler(部品名)、Tryer/Trier(旧綴り、Giesen社など)。
  • ドイツ語:Probenzieher(サンプル引き出し器)、併記 Probenzieher (Tryer)もある。

日本での呼称

  • 一般的:サンプラー、トライヤー(英語由来の音訳)。
    焙煎釜からのサンプラーによる焙煎豆のサンプリングの様子。左手には焙煎度を確認する標準豆トレイ。All about Coffee 1922より。
    焙煎釜からのサンプラーによる焙煎豆のサンプリングの様子。左手には焙煎度を確認する標準豆トレイ。All about Coffee 1922より。
  • 俗称:「さし」=伝統的な日本語の俗称。豆を差して抜き取る動作から生まれた呼び名。
  • 近年:富士珈機(Fuji Royal)では公式図面で「テストスプーン」で統一。
  • 現場では依然「サンプラー/トライヤー」が広く使われ、業界標準語となっている。 (高橋孝夫)


参考文献:
  • WIlliam H. Ukers "All about Coffee"  1922 New York
  • Richard Evans、英国商業用コーヒー焙煎機、英国特許No. 4907(1824)
  • Probat, Diedrich, Burns、Petoronciniや富士珈機(Fuji Royal)社のカタログ、マニュアルや図面