*コラム:いつコーヒーの栽培が始まったのか?
換金作物としてコーヒーの栽培が始まった時期を特定するのは難しい。コーヒーノキがエチオピア高原からイエメンに持ち込まれたのは明らかだが、コーヒー飲用の始まりを記したアブダル・カディールの書にはコーヒーの栽培ついては触れられていない。
しかし、アブダル・カディールの書に、ジェマレディンが15世紀半ばにアデンにコーヒーを伝えた経緯を記したのち、「まずカートがアデンに広まり、・・・たまたまカートが不足していた時期に、ジェマレディンは彼の元に集まり弟子となった者たちに、同様に眠気を払う効果があるブンから作った飲み物(コーヒー)を試してみるように勧め、この時からコーヒーが広まり続けた。」との記述がある。カートはおそらくコーヒーに先行してイエメンで栽培されていた。なおカートにはコーヒーと同じように覚醒作用があり、生育条件はコーヒーとほぼ同じである。
コーヒー飲用の慣習が15世紀半ばからイエメン南部に広まったことから、
・コーヒー導入当初はエチオピアからコーヒーの実(半ば自生か)を移送。
・拡大する需要に対応してイエメン南部の山岳地域(アデンの北)でコーヒーの商業的栽
培を始める。
・次第にイエメンの山岳地帯全域にコーヒー栽培が拡大。この間にカートの栽培をコーヒ
ーに切り替えていった可能性が高い。
このような経緯で、イエメンでのコーヒー栽培が広がっていったと推察される。
なお、近年イエメンでカートの需要が増え、コーヒー栽培がカートに侵食されているという逆の状況になっている。
参照
・シルヴェストル・ド・サシーSilvestre de Sacy『アラブ文選Chrestomathie arabe』
より、アブダル・カディールAbd-alkader著『コーヒーの飲用の合法性についての最も強
力な証左les Preuves les plus fortes en faveur de la légitimité de l'usage du Café』第1部。