カフェ・ツィンマーマン
「カフェ・ツィンマーマン」 Zimmermannsche Kaffeehaus:
1717年に建てられたバロック様式の建物の大型のコーヒーハウス。開業も同じ頃であったと考えられる。店は市中心部のマーケット広場 Malktplatz 近くのカタリネン通り katharinenstraße とベトッハー通り Böttchergasse の角、カタリネン通り14番地(現在の造形美術館近く)にあり、経営者はゴットフリート・ツィンマーマン Gottfried Zimmermann である。
このコーヒーハウスには、大規模な音楽アンサンブルができるステージと150人の聴衆が入る広間があり、多くのコンサートが開催された。1723年以降は、学生コレギウム・ムジクム Collegium Musicum (学生の音楽愛好家の集まり)が定期的にコンサートを開き、1729年から1739年にかけては、作曲家のヨハン・セバスチャン・バッハ J.S.Bach がここでコレギウム・ムジクムの指揮をして、多くの器楽曲やカンタータの演奏がなされた。バッハの代表的世俗カンタータである「コーヒー・カンタータ」は、1934年にここでバッハ自身の指揮により初演がなされた。
この時代、ドイツのコーヒーハウスは男性の集まる場所であり、女性のコーヒーハウスへの出入りは普通禁じられていた。しかし、このコーヒーハウスのコンサートだけは女性も出入りができた。さらに、コレギウム・ムジクムのコンサートには、開催料や客の入場料はなく、聴衆はコーヒーハウスのコーヒー代のみで音楽が楽しめたといわれる。ツィンマーマンはこのコーヒーハウスのほかに、市の東部グリムマイシャーシュタインヴェーク Grimmaischer Steinwegでコーヒーガーデンを経営しており、夏の時期はこちらのコーヒーガーデンでもコンサートが開催されていた。
1741年のツィンマーマンの死後、いつまでこのコーヒーハウスが営業を続けていたのかは不明であるが、コーヒーハウスがあった建物は、1943年の第2次世界大戦の空襲で崩壊した。 (小村嘉人)
ヨハン・ジョージ・シュライバーの版画 1720年頃 Wikipedia:Zimmermannsche Kaffeehaus (ドイツ語版)より
参照文献:
・『新訂標準音楽辞典 第二版』 音楽之友社 2008年 ・ 久保田慶一著 『バッハ 作曲家◎人と作品』 音楽之友社 2021年 ・ Wikipedia:おしゃべりはやめて、お静かに (日本語版、英語版、ドイツ語版) ・ Wikipedia:Zimmermannsche Kaffeehaus (ドイツ語版)