ビール通りとジン横丁
ビール通りとジン横丁:Beer Street and Jin Lane
1751年に発表された、18世紀のイギリスを代表する風刺画家ウィリアム・ホガースの一対の版画。二枚を見比べることにより、社会の近代化の過程で、無秩序に発展した18世紀のロンドンにおける明と暗を表現している。
商業貿易で富を得た上流階級とそのおこぼれを授かる中産階級の人々と、農村出身の貧しい労働者・ユダヤ人・外国からの移住者との格差は想像を絶するものであった。版画『ビール通り』では、ビールを飲むことの健康的なメリット・善良・繁栄する街の情景を描き、一方『ジン横丁』では、不治の病、嬰児殺し、飢え、自殺のなどの衝撃的な描写で、ジンに溺れる貧困の悲惨さを描いている。
二つの版画は版を重ねて膨大な数が印刷され、コーヒーハウスやタヴァーンにも掲げられ、広くイギリス社会に浸透した。免許制によってジンの販売を規制する「ジン法(1750年蒸留酒販売法 Sale of Spirits Act 1750)」を後押しして、ジンに対する強烈なネガティブキャンペーンの役割を果たした。 (小村嘉人)
参照文献:
・小林章夫 『図説 ロンドン都市物語』 河出書房新社 1998年
・Wikipedia Beer Street and Jin Lane (英語版)
・東京大学経済学図書館Digital Museum 『アダム・スミスからの知の継承』