ラネラ・ガーデン

提供:コーヒー歴史年表

ラネラ・(ティー)ガーデン: Ranelagh Gardens

ロンドン西部のテムズ川北側にあるチェルシー Chelsea に開園した公共のプレジャーガーデン Pleasure Gardens (一般の庭園とは異なり、郊外の広々とした空間で、コンサートホール・野外ステージ・遊園地・動物園・飲食ができる施設・紅茶を楽しむエリアなどを備えた公園や庭園)。ラネラ伯爵によって建てられた、王立チェルシー病院(退役軍人のための保養施設)の敷地であった。

ラネラ・ガーデン
ラネラ・ガーデンの「ロタンダ」の外観  トーマス・ボウルズの彫刻  Wikipedia Ranelagh Gardens   (英語版)より

18世紀のロンドンには、メリルボーン・ガーデン Maryleborne Gardens 、ヴォクスホール ・ガーデンVauxhall Gardens をはじめ多くのプレジャーガーデンがあった。コーヒーハウスが街の中心部に多く、男性が中心の閉鎖的な空間であったのに対し、プレジャーガーデンは郊外の広々とした空間で、女性が楽しめる場であった。やがて男性のなかにも、くつろげる娯楽空間としてのプレジャーガーデンを利用する人が多くなった。このことが、18世紀以降コーヒーハウスが徐々に衰退していった一因にもなっている。

ラネラ・ガーデンの特徴は入場料に飲食代(紅茶とパン)が含まれていたこと、さらに直径46mの大きな円形の建物(ロタンダ )があり、夜の冷え込みや冬の寒さが凌げたことにある。このロタンダでは舞踏会やコンサートも開催され、1765年に9才のモーツァルトが演奏した記録が残されている。またガーデン内には小川や池・散歩道が整備され、上流階級の女性たちに人気であった。

ロタンダは1805年には取り壊され、多くのプレジャーガーデンと同様にラネラ・ガーデンも19世紀には閉園した。後に整備され、現在も、チェルシー病院に隣接した日陰の散歩道のある緑の庭園になっていて、毎年王室のメンバーも参加する「チェルシー・フラワーショウ」の会場にもなっている。 (小村嘉人)

 

参照文献:

・春山行夫 『紅茶の文化史』 平凡社 1991年

・Wikipedia Ranelagh Gardens  (英語版)

・Wikipedia Pleasure Garden  (英語版)

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