ロータ・クラブ

提供:コーヒー歴史年表

ロータ・クラブRota Club

 イギリスの共和主義者・作家のジェームズ・ハリントン James Harringtonにより、「マイルズ・コーヒーハウス Miles’ Coffee House」で結成されたクラブである。「ロータ・クラブ」の前身はジョン・ワイルドマンが居酒屋で結成した「ボウ・ストリート・クラブ」であり、ハリントンも友人たちと共和党政治について論議した。後に、ハリントンは節度と会話が重要であると考え、アルコールのないコーヒーハウスに場所を移し、新たに「ロータ・クラブ」を結成した。「ロータ」という名称は、ハリントンの「議会の議員は再任せずに交代制で」という考え、つまり「ローテーション」からきている。

 「ロータ・クラブ」には、貴族、軍人、作家、商人などさまざまな社会階級のメンバーが集まった。クラブへの出席の自由、個人の自由性からメンバーの数は非常に多く、「マイルズ」は毎晩満員であった。ただし、メンバーの多くは議論の観客で、議論を行う中心的メンバーは、ジョン・オーブリー、サミュエル・ピープス、ヘンリー・ネヴィルなどの文学者、ジョン・ワイルドマンをはじめとする軍人、エドワード・バクショー(神学者)、ヘンリー・ブラント卿などハリントンの共和主義仲間が多かった。特に、1659年11月から1660年2月には、毎晩のように活発的に論議が繰り広げられた。話題は政治に限らず文学その他にも及んだ。

 連日のように活発な論議が展開された「ロータ・クラブ」ではあるが、政治体制が崩壊し王政が復活したために、共和主義論議の目的がなくなり自然消滅した。ハリントンと「ロータ・クラブ」の政治への着想は実現しなかったが、その精神は受け継がれて、その後の近代民主政治の発展に影響を与えた。 (小村嘉人)


ジェームズ・ハリントンの肖像 1635年頃の油彩画  Wikipedia:Rota Club (英語版)より

ジェームズ・ハリントンの肖像 1635年頃の油彩画

Wikipedia:Rota Club (英語版)より


参照文献:

・小林章夫 『コーヒー・ハウス』 駸々堂 1984年

・岩切正介 『男たちの仕事場 近代ロンドンのコーヒーハウス』法政大学出版 2009年

・Wikipedia:Rota Club(英語版)

・Wikipedia:James Harrington(英語版)

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